Orchestra Ensemble Kanazawa

新シーズンは、アーティスティック・リーダーの広上淳一によるオール・ベートーヴェン・プログラムで幕を開ける。曲は「プロメテウスの創造物」序曲、ピアノ協奏曲第3番、交響曲第4番。ベートーヴェンの創作期でいえば、中期の入り口に焦点が当てられている。「プロメテウスの創造物」は1801年、ピアノ協奏曲第3番は1803年、交響曲第4番は1806年に書き上げられた。旺盛な創作意欲が湧き上がり、次々と傑作が生み出されていた時期の作品である。

マエストロにとってもOEKにとってもベートーヴェンは最も重要なレパートリー。新シーズンは広上&OEKコンビがベートーヴェンの核心に迫る。

ピアノ協奏曲第3番でソリストを務めるのは、トルコ出身のファジル・サイ・枠にとらわれない活動で早くから注目されてきた鬼才だ。作曲家として多数の作品を発表して新しい音楽の世界を切り拓く一方で、ベートーヴェンやモーツァルト、バッハなど古典の演奏にも情熱を注いできた。「ピアニスト」という以上に「表現者」という言葉がよく似合うアーティストだ。（飯尾洋一：音楽ジャーナリスト）