Orchestra Ensemble Kanazawa

入国制限により来日できない芸術監督マルク・ミンコフスキに代わって、3月は鈴木雅明が「第九」を指揮する。バッハ・コレギウム・ジャパン（BCJ）の創設者であり、バッハ演奏の第一人者として国際的な評価も高い鈴木雅明だが、近年はベートーヴェンにもくりかえし取り組んでおり、東京で開催されたBCJとの「第九」は大きな話題を呼んだ。また、モダン・オーケストラとの共演も活発で、ニューヨーク・フィルやバイエルン放送交響楽団といった世界のトップ・オーケストラへの客演も多い。OEKとは昨年もミンコフスキに代わってベートーヴェンを振って好評を博したばかり。代役としてこれ以上の人選は考えられない。

独唱陣は森谷真理、池田香織、小堀勇介、大西宇宙。まさに今、日本の音楽界の先頭に立って活躍する旬の歌手たちがそろう。オペラで八面六臂の活躍をくり広げる4人が、ベートーヴェンの音楽が生み出す破格のドラマを余すところなく伝えることだろう。合唱は東京混声合唱団。

「第九」といえば日本では年末の風物詩として定着しているが、今回は早春の「第九」。コロナ禍からの出口へと向かう希望の歌として、高らかに「歓喜の歌」が歌われることを願う。（飯尾洋一：音楽ジャーナリスト）