Orchestra Ensemble Kanazawa

10月はOEK首席客演指揮者のユベール・スダーンが登場する。プログラムはハイドンの交響曲第96番「奇跡」、モーツァルトのクラリネット協奏曲（吉田誠のバセット・クラリネット）、シューベルトの交響曲第2番。スダーンにとってこれら古典派から初期ロマン派の作品は得意のレパートリーと言ってもよいだろう。東京交響楽団音楽監督時代はたびたび生命力と躍動感にあふれた名演を披露してくれた。

ハイドンの交響曲第96番「奇跡」は初演時の出来事からこのニックネームで呼ばれている。演奏会で会場のシャンデリアが落下したが、たまたまだれもケガをせずに済んだことから、長年「奇跡」の題で親しまれている。少なくとも曲は名匠の魅力が遺憾なく発揮された奇跡のような傑作だ。

そのハイドンを偉大な先輩として敬愛していたのがモーツァルト。早すぎた晩年に書かれたクラリネット協奏曲は、しみじみとした情感にあふれる名曲である。作曲は1791年。実はハイドンの「奇跡」と同年に書かれている。若い世代を代表する名手、吉田誠のソロが聴きもの。作品本来の姿を伝えるために、通常よりも低い音が出るバセット・クラリネットを使用する。

シューベルトの交響曲第2番には青春期の作曲家のみずみずしい感性が息づく。OEKの小気味よいアンサンブルを存分に楽しめることだろう。（飯尾洋一：音楽ジャーナリスト）