Orchestra Ensemble Kanazawa

第445回定期公演では常任客演指揮者の川瀬賢太郎が、ロマン派の音楽に光を当てる。取り上げられるのはメンデルスゾーン、シューマン、ショパンの作品。3人は同年代の生まれで互いに交流を持っていた。メンデルスゾーンは1809年生まれ、シューマンとショパンは1810年生まれ。これだけの才能が集中的に誕生していることは驚くばかりだ。

メンデルスゾーンの序曲「美しいメルジーネの物語」は、水の精の伝説に基づいた演奏会用序曲。海を思わせる描写性と豊かな幻想味はメンデルスゾーンならでは。シューマンのピアノ協奏曲は作曲者代表作のひとつ。全編にわたって豊かでみずみずしい楽想にあふれた大傑作である。OEKとたびたび共演する名手、菊池洋子がソロを務める。

ショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」はピアノ独奏版でも広く親しまれているが、今回はオリジナルの協奏曲バージョンで。菊池洋子のソロでシューマンとショパンの両方を聴けるのがうれしい。シューマンの「序曲、スケルツォとフィナーレ」は少し変わった作品だ。3つの楽章が組み合わさった曲で、見ようによっては「隠れ交響曲」とも言える。

3人の天才たちが切磋琢磨しながら新時代を築いていった様子を、今回のプログラムから思い浮かべることができるだろう。（飯尾洋一：音楽ジャーナリスト）